華林 第 12 号

(平成18年3月発行)

「卒業からの始まり…」

学校法人 佐藤栄学園
理事長 佐藤 栄太郎

 英語で「卒業式」のことを、特にアメリカでは終える・終わるの「卒」ではなく、「開始・始まり」という意味の「コメンスメント」(COMMENCEMENT)といいます。人生のスタートとか新しいことの始まりという意味を持っています。巣立っていく卒業生たちにとっては大事な節目の時でもあります。

 さて、皆さんが青春の思い出を刻んだ埼玉短期大学は、早いもので開学から18年目の春を迎えました。建学の精神「人間是宝」に基づき、学長はじめ諸先生の教えによく応え、新しい世界へ巣立つ第16期生、また職場に家庭にしっかりと根を張って努力を続けている卒業生の皆さんも、私と同様、感慨深いものがあろうと推察いたします。

 本学を卒業された皆さんはそれぞれの道に進まれ、時代と社会のニーズに応えて、「今日学べ」の教育の成果を、誇りと自信をもって実践されていることと確信いたします。職場で、学校で、家庭でそれぞれに当面している立場を理解し、その立場を大切に、「人は誰でも努力と勉強次第でその道の第一人者になれる」ことを信じ、今置かれている立場で、努力を重ねて最善を尽くし、創意工夫して事に当たり、苦難に直面しては「為せば成る」の実力と精神力をもって克服し、人から信頼される真の第一人者になることを期待しております。

 校歌の一節に、「未来にむかい心を開き、世界へと結ぶ理解、ロマン(感動)・チャレンジ(挑戦)・クリエイト(創造)、人は宝と今自己を悟り、すべての人の幸せ願う、幸福の鐘が鳴る埼玉短期大学。」とある様に、皆さんがそれぞれ自己の能力から創造の世界を発展させることを願っております。

「新しい学位制度について」

埼玉短期大学
学長 加賀谷 煕彦

 明るい春を迎えて校友会会員の皆様もお元気にお過ごしのことと存じます。

 「華林」第12号では、この度、創設された短期大学の新しい学位制度について説明することで学長挨拶にさせて頂きます。このことについて、文部科学省高等教育局大学振興課の解説パンフレットにしたがって、あらましを紹介しましょう。従来、短期大学の卒業生には「準学士」の「称号」が与えられていましたが、これからは「短期大学士」の「学位」が与えられることになります。「学位」とは、?学術の中心である大学が与えるもの ?一定水準の教育を受け、知識・能力を持つと認められるものに与えられるもの ?授与された学位は国際的にも通用するものであり、わが国では、これまで、「博士」「修士」「学士」「専門職学位」が「学位」に位置づけられています。今回の制度改正により、短期大学卒業生の位置づけが大きく変わることになります。これは短期大学の歴史の中で特筆される大きな制度改革といってよいでしょう。

 「短期大学士」の創設には次のような実際的メリットがあります。?短期大学卒業生が海外の大学に留学する場合、あるいは、わが国の短期大学に留学した外国の学生が帰国して就職する場合に「短期大学卒」の学歴について適切な評価を受けやすくなる。?各短期大学には、今回の制度創設を契機に、学位を授与する機関として教養教育の充実など、教育内容の改善に向けた一層の取り組みが期待される。

 本学でも新しい学位制度のねらいを生かすことをこれからの教育構想の重要課題としてとらえています。交友会員の皆様の益々のご支援をよろしくお願い申し上げます。

思い出など

日本文化コミュニケーション学科
渦巻 恵

 埼玉短大の開学が平成元年。講師として採用された私は29歳でした。初年度の教え子から今年届いた年賀状には「年女」とあり、びっくり。今、皆さんは何歳ですか?どんな毎日を過ごしていますか?

 短大は相変わらずです。電車は一時間に2、3本。駅前のコンビニと住宅街を通り過ぎると、あとは田んぼ。夏には麦畑の緑の波、冬には北風が吹きぬけていきます。ピンク色の校舎。八階の教室からは富士山。体育館の下が学食で、中庭を挟んで研究棟。私の研究室も相変わらず、いろいろな学生で賑わっています。

 部屋一杯に響く笑い声。研究室ではぐくまれた友情、そして恋愛。年賀状やメールで届く結婚や出産の知らせには、自ずと笑みが浮かびます。

 そして、研究室に私と二人きりになった時に、ひっそりと流された涙。親との確執を打ちあけて声を上げて泣いた学生。人間関係に悩んでの痛々しい自傷の跡。休み時間ごとに研究室で心を休めては、教室に向かっていった、丸まった小さい背中。

 いろいろなドラマがありました。私が教師として適切に指導できていたか、全く自信はありません。理解者気取りの自己満足教師なのかもしれません。

 でも、毎年毎年学園祭にはるばる足を運んでくれる卒業生たちの顔を見ると、教師をしていて良かったとつくづく思います。

 皆さんが座った研究室の椅子は、ちょっとくたびれてしまいましたが、いつでも皆さんを待っています。