華林 第 2 号

(平成8年3月発行)

国際親善は正しい挨拶から

学校法人 佐藤栄学園
理事長 佐藤 栄太郎

 新しい21世紀まであと5年という黎明の時を迎えた今、社会は急速に変化し、国際化、情報化はさらに進展しています。しかし、どんなに社会が変わっても、自然の営みは変わることも、留まることもありません。今年も美しい花が咲く暖かな春がめぐって来ました。皆さんもお元気でこの素晴らしい季節を迎えたことと思います。

 皆さんは、学生時代の蛍雪の功を奏し、今、春の花のように大輪を咲かせ、輝くような新しい希望の地にしっかりと根を張っていることと確信します。

 今や人類は、文化、科学を宇宙に求めるグローバルビレッジ化の道を進んでいます。これからの地球時代にあっては、ミクロ的には国家間、民族、宗教、文化、言語等の複雑な諸問題があり、また、マクロ的には地球から宇宙を包括したすべての調和と共生が求められるでしょう。人間社会は進歩によって変化し続けますが、人類の夢と理想によって創造されてきた今日の国際社会を考えるとき、日本人として国際センスを身につける第一歩は正しい挨拶であり、正しい会話にあるのではないかと考えます。日本人にも通じない会話では外国人に通じないのが当り前です。外国人は必ず笑顔で挨拶し、感謝の心で人と接しています。「グッドモーニング、サンキュー、エクスキューズミー・・・」どんな小さな事でも相手を無視するようなことはしません。日本人ほど挨拶の下手な人種は少ないのではないでしょうか。国際化の進む社会でのコミュニケーションは、日本人同士の心の挨拶、友情と感謝の心から、大きな世界が拓かれていくのではないでしょうか。新しい希望の地でも、皆さんの美しく明るい笑顔の挨拶が、更に大きな世界を拓いてくれていることでしょう。皆さんのご健勝とご活躍を心よりお祈りいたします。

輝かしい21世紀を迎えるために

埼玉短期大学
学長 佐藤 照子

 学窓からみる景色は、すっかり春です。平成8年3月、時は無限に流れていきます。皆様方の青春の一ページを飾ったこの校舎も、日差しを一杯浴びて静かにたっています。

 1996年、いよいよ21世紀までに5年というところに来ました。皆様の心からなる活躍を祈っています。

 なんとなく、心が重くなった昨年ですが、今年は穏やかな年になるような気がします。学園も平成国際大学の開学が決まり、いよいよ大学法人としての形も整ってきました。短大も更に一段と飛躍したいと思っています。今、社会では高度科学文明時代を過ごしていますが、情報化は、もっともっと、社会をスピード化し魅力化し発展させていくでしょう。

 反面、結果が先取りされる社会で、子供たちが、心から感動したり、素直に喜ぶなどということが少なくなり、遠い先のみを見て身近なものを大切にするという生活が軽視されています。情報化社会の光と陰の、陰の部分が表面化して来ています。いつの世にも解決しなければならない、人生の課題があります。映像化社会より、直接体験を大切に、人間性の回復と共に日々の生活を、心楽しく過ごせる心のあり方を一つ一つ模索していきたいものです。学生時代に、21世紀は、手づくりの物事が尊重されると教わりました。人間として授かった身体、心を使った新しい息吹のある生活が訪れることを楽しみにしています。

暮しにバラの香りを

英語学科
助教授 ゴーマン・ギルバート

 日本人の勤勉さには定評がある。このことは、企業戦士とよばれる多くのサラリーマンが、通勤電車の中で眠りこけている疲労しきった姿が、よく物語っている。一方で、余暇を楽しむ日本人もふえてきた。それはハワイやグヮムの海辺で過す彼等の数が、驚異的に伸びていることでも分かる。日本人は熱心に働き、熱心に遊ぶ。これらが共有するエネルギーは、企業戦士のもつ勤勉さと同質である。忘年会の飲食には、ラッシュ時の通勤電車に乗り込む時と同じ迫力がある。ゴルフのプレーにかける意気込みは、任天堂のゲームにも示される。主婦たちも負けてはいない。テレビの時代劇の侍が、危機一髪の現場にかけこむと、一刀のもとに25人もの悪漢を切り捨てるのと同じ早業で、朝食を作って子供達を学校に出すと、パートに出かけ、別の日には習い事もこなし、買い物、夕食の支度、と動きまくる。たとえ休暇で出かける海外旅行でも、熱狂的なこのペースが変わることはない。働き、遊び、食べ、眠る。このなかに欠けているのはなにか。それは、ゆとり、だと私は思う。ゆとり、とはゴルフやスキー、またはテニスをすることではない。むしろ殆ど重要ではない日常生活のなかで、ふと安らぐ時間をもつ、ということである。子猫と遊んだり、巣作りに余念のない蜘蛛をみたり、赤ん坊をあやし、鳥に餌を与え、公園を歩く等々。時には息を抜き、自分と他者との関係を見つめ直すのは大切である。アメリカには、“時間を取って、バラの香りをかげ”という諺がある。よく働きよく遊ぶのはよいことである。しかし同様に、バラをかぐ時間も失ってはならないのである。かぐわしいバラの香りは私達の感性を磨き知性を高め、人生の真の意味も教示してくれるからである。