華林 第 6 号
(平成12年3月発行)
日々、能力を高めながら
学校法人 佐藤栄学園
理事長 佐藤 栄太郎
俗に、話や音楽に感じ入ったり、芸術作品などに圧倒され、うっとりとする状態を「聞きほれる」「見ほれる」と言ったりします。
先般、真打の講談師が話の中で芸人の特質、条件を挙げ、最も必要なことは「芸の道に夢中になること、つまりは仕事にほれ込むこと」と解説、力説しておりました。
なるほど、とうなずきながらも、何も芸の道だけの必須要件ではないと胸の内でつぶやきました。
もちろん、講談師もそのことを承知で言ったんだろうと思います。「仕事」は、特に生活を立てるための職業を指しますが、広くは「今、しなくてはならないこと」を意味すると考えるからです。人生は、広い意味での仕事の連続の日々なのです。
わが国の短期大学の主な目的は、深く専門の学芸を教授研究し、職業や実際生活に必要な能力の育成です。言うまでもないことですが、この目的は2年、あるいは3年で終了するのではなく、その後の人生の方法論の「育成」をうたっているのです。
みなさん、もう一度、埼玉短期大学の門を叩き、学び、友との語らいなどのころの自分を思い起こしてみてください。あのころの情熱は失われていないか、「仕事」に夢中になっているか。能力育成の作業は、ずっと続くのです。がんばりましょう。
希望と夢あれば人生は楽し
埼玉短期大学
学長 佐藤 照子
校友会の皆さんお元気ですか。通学路の樹々の葉が落ちて冬もたけなわです。
人間にはそれぞれ顔があります。自分で見る顔は20%で他の人が見る顔は80%です。ラジオの中で顔について話をしていますが、悪役で有名な俳優さんが語っていました。今までの悪人顔はやりたいが、今の悪人顔はやりたくないといっていました。善人顔をして何をするのかわからない恐ろしさをもっている恐さがあります。私ももっともだなあと考えました。
勧善懲悪で悪はかならず滅びるという考え方はなくなりつつある昨今、生きのびる悪の恐ろしさを知ることも大切です。人間は高度な心の働きによって文化を生み出し生活の向上をはかってきました。目にみえるものだけが幸せと考えるあやまりに気づき、心の時代となった今日、人間自身の内なる心をしっかりと見つめ、良い方向を目指して努力していけば一段とおだやかな心で日々を過ごすことができす。
心に指針をもって、リズムをととのえ年を重ねる。あまりに平凡でもったいない気がしますが、プラス、夢と希望があれば幸いです。
選んだ道を確信する 〜 俳聖芭蕉に学ぶ 〜
就職指導・教職課程担当
黒須 正吉
窓開けて花の便りを待つ三月、卒業生の皆さんには如何お過ごしでしょうか。
私は平成4年4月から進路講座をはじめ、自己PR・志望動機等の添削指導、進路相談、数学科教育法の授業等を通じ、3,567名の皆さんと接してまいりました。この間就職環境悪化の波が幾度か襲ってきましたが、皆さんは未来を展望し、その都度活路を見出し、毎年九十数%の就職内定率を挙げてこられました。
これ偏に理事長・学長両先生のご指導と教職員の皆様の力強いご支援があったればこそと思っています。
皆さんには、ガイダンスの中で、就職活動を援助するために、毎回テーマを掲げて指導してきました。
その中で「処世の心得」として大切にして欲しいと願い、俳聖芭蕉の「無能無才にしてこの一筋につながる」という言葉の重みについて話した事があります。
芭蕉は「たよりなき風雪に身をせめ、花鳥に情を労して暫く生涯のはかりごとさへなれば、終に無能無才にして、此の一筋につながる」と俳諧一筋に生涯をかけたのです。
この事は、「自分は何をしても満足に出来そうにない。だから俳諧一筋に生きているのだ。新しい道はない。自分が選んだ道が自分にとっては最上である。」と確信し、日々の生活を大切にされ充実感に生きてこられたので、輝かしい世界が開けたのだと思います。
実は「道」とは人間の生き方なのであり、人生の価値そのものであり、その道は直ちに日常の実践に結びつけられているものだと私は信じ、これからも努力していきたいと思っています。
私は「あきらめたら人生の舞台の幕はさっさと降りてくる」と語った事がありましたが、皆さんが選んだ道を確信し、生き甲斐のある人生を粘り強く歩み続けて欲しいと願っています。